見たくないものにはフタを
聞きたくないから耳栓
好きな歌を歌い
食べたいものを好きなだけ
怠惰で傲慢
だからなに?
だれも跳べないハードルは
ただの障害物
本当は知っている
ごまかしているだけだ
知っているのに
気づいているのに
だれかのよいこ
父の
母の
だれかのよいこ
群れて渡る美しい白鳥より
孤高の荒鷲がいい
だれよりも高く飛べ
荒鷲よ
たぶん
そんなものはないのだろう
確かなものなどなにもない
私たちはみな
風が吹けば流される
頼りない、下らない葦
世の中ぜんぶ
まやかしだ
ごまかしだ
それでもただひたすら
呼んでいる
いつでも
どこでも
だれが
だれを
私が
それは自分を弱く、不安定にさせる
失うのが怖いと思わせる
だから
依存するのが怖い
失ったときのことを考えると
たぶん
生きてはいられない
見なれたはずだった
遠い背中
遠い笑顔
もしもし
どこに
どこに
どこに
残像に
とらわれる
今もまだ
とらわれている
半分は
望んでいる
こがれるほどに
ごめんね
ごめん
ブラックホールに
ボールを放る
ほんとにごめん
夜のしじまに
じっと息をひそめて
ただ、待っているのだ
あまい期待をはじっこにのせて
船はゆく
日常に潜む不思議な経験
パラレルワールド
後悔と夢
老人と海
アランとエドガー
名指しと蜷語よ
悲しいとかさみしいとか
そういうことを
ふつうに
ただ、ふつうに
何事も
むき出しでいるのは落ち着かない
上手に隠していたい
隠しきれなくても
隠していたい
気づかないでいたい
なにも知らずにいたい
知らずにいたかった
嘘に気づかないでいたい
だれもが本当のことばかり
知りたいとは限らない
やさしい記憶だけでいい
たとえ嘘でも
真実の重みで
潰れる
上辺だけでいい
本音はいらない
その場限りで
それでいい
それがいいし
それ以上のものは望まない
いつも穏やかに過ごしたい
ぬるいくらいでいい
優しければいい
笑っていられたらそれでいい
耳が痛い
目が痛い
頭が痛い
みたくない
ききたくない
思い出したくない
ざっくりと刺さる
諸刃の剣
いつもおおざっぱな人間が
豚足にうっすらと
焦げた毛を見つけてしまい
どうしても
食べられなくなった
そういうことはあるものだ
いつかどこかの王子様が
颯爽と現れて
ここから連れ出してくれる
ほんの少しの甘い夢
くちびるには歌を
ほんのり甘い希望を
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